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2005.11.03

日本のブロードバンドを切り開いた「スピードネット」が終了

仕事に追われてぜんぜん余裕がありません。
Blogも全然更新していないように見えますが...
取材などで外出がある日はFlickrを...
そうでない日もこのブログの右側に表示されているdel.icio.usは頻繁に更新しているので、チェックしてみてください。

久々に、「これは書かなければ」と思ったのがITmediaで見つけたこのニュースです:
ITmedia:「スピードネットがサービス終了

私はスピードネットのユーザーではないけれど、このサービスが日本のブロードバンド時代を切り開いたと今でも信じています。

サービスが発表された当時の日本は、まだ電話回線を使ったダイアルアップ接続の時代でした。
米国だと、そもそも同じ市外局番だと通話料定額が当たり前なので、インターネット普及とともに電話回線を1つ増やして、一方の電話をAOLにつなぎっぱなしにする人が増えたーーそんな時代でした(これでAOLは、しばらく回線増強に大変苦労したようです)。

NTTは「日本はISDNが普及しているから、そのISDNと干渉するADSLは利用できない」と断言していました。

それでも、「これからの時代、インターネットは重要」と、良心的な価格で接続サービスを提供するプロバイダーもいくつか登場していました。でも、どんなにプロバイダーが頑張っても、結局、電話線に頼る以上、最後の最後でNTTの回線に頼らなければならない。
 3分10円、1時間で200円、24時間で4800円、当時の日本での常時接続の値段は1ヶ月で14万4000円+プロバイダー代だったのです(もっとも、OCNエコノミーなど安価な専用線は出始めていましたが、やはり毎月数万円はかかりました)。これは一般家庭ではおよそ受け入れられません。
ADSLの夢も断たれていた以上、日本の常時接続は絶望的でした。

そんな中、スピードネットでは無線技術を使って、NTT回線をバイパスし、毎月数千円で常時接続を実現する、という大胆なサービスを提案していました。
電柱と近隣家庭のベランダなどに通信装置を置くことで、NTT回線を一切使わないインターネット接続を確立する。
 これによって、ついに待望の完全定額の常時接続が実現する、という夢のサービスだったのです。
 ソフトバンクや東京電力の他に、マイクロソフトとかも参加していました。「このサービスの発表でようやく日本にも未来が拓けた」と感動し、結構、たくさん記事を書いたのを覚えています。

 NTTが頑張っていろいろサービスを始めたのも、このスピードネットの発表の後からだったと思います。
 実はどっちが先か、調べないと自信がありませんが、もし記憶が定かだったら、「テレホーダイ」というサービスがでてきたのも、このスピードネットの発表の後だったような気がしています(今、調べている時間がないので、後で調べてコメントでフォローします)。
 テレホーダイというのは夜11時から翌朝の何時かまでISDNを含む電話回線が定額になるサービスです。それ以前は「定額制はできない」と断言していたNTTが「深夜帯の回線がすいている時間ならOK」と手のひらを返したような発言で始めたサービスでした(NTTはその後、他社のADSLサービスが広がり始めると、再び手のひらを返して自らADSLサービスを始めます)。

スピードネットの初期の構想では、学校などの教育機関にも積極的に「夢のブロードバンド環境」を導入していく予定でした。しかし、その後、ワイヤレス通信が思ったほどうまくいかなかったりとか、NTTが予想以上にがんばったこと、そしてADSLが台頭し始めてきたことなどを受けて、スピードネットは期待していたほどの成功を収めることはありませんでした。

 今、スピードネットと同じ電柱に取り付けた無線装置で、ライブドアなどが公衆無線LANの面サービスに取り組んでいるニュースを聞くと感慨深いものがあります。

 スピードネットの登場までは、私もNTTが提示したものを、「それが答え」と受け止めて、そのまま報じていた気がします。しかし、スピードネット発表以来は、(私自身も含めて)日本の多くのマスコミが「日本にブロードバンドを普及させるには、ここで頑張らなければ」とかなり奮闘、努力したんじゃないかと思いますーー私はそうでした。

 スピードネットの後も、ソネット(その後の東京めたりっく通信)などのADSL事業者の活躍を世に伝え、ブロードバンドの必要性を説き、(NTTの言っていることに反して)実現可能な技術やサービスが世の中ではつくられているんだ、ということをかなり頑張って取材し伝えてきたと思っています。
 今やブロードバンド大国となった日本ですが、その実現の中ではこうした日本のマスコミの活躍も少なからず評価されていいと思います。
 英国やらフランスやらのマスコミは、同じ時期、「どうせウチの国は何をいっても無理」的な態度で、あまりそういったことが報じられていなかったと思います(イタリア辺りに、それなりにおもしろい構想を持っているプロバイダーはいくつかあったような気がするのですが...思い出せません)。今の両国でのインターネットの遅れの原因はそこいらへんにもあるんじゃないかと思います(もっとも、「インターネット環境が遅れている方が人間幸せに生きられるのかも」という気もしないでもないですが)

 世の中には素晴らしいものをつくりだそうと奮闘している人が大勢います。でも、彼らが必ずしも成功できるとは限りません。
 中には時の経済情勢が悪かったり、たまたまタイミングが悪かったり、あるいはモノはよくてもとんでもなくマーケティングが下手だったりといったツマラナイ理由で、失敗に終わってしまう努力も少なくありません。
 私が雑誌とかに記事を書いていこうと思った動機も、そういった努力を1つでも多く取り上げ、伝えていきたいから。

 「スピードネット、サービス終了」のニュースは、そんな初心を、そしてADSLが普及するまで、Macの記事と同じくらいの情熱で、ブロードバンドの記事を書きつづけていた日々を思い出させてくれました。

 サービス終了は残念ですが、感謝の意とともに、彼らがやってきたことにはそれなりに大きな意義があったことを伝えられればとこの記事を書きました。

11月 3, 2005 パソコン・インターネット |

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コメント

nobi さんの記事を読んで、ああ、こんなことをしている人がいる、こういうことも可能なんだ、彼の地ではこんなことが行われているんだ、などと刺激されてきました。私は nobi さんをはじめとする信頼できるジャーナリストをマスコミとは呼びたくありません。記事に対する信頼が、人に対する信頼からできているから。こういうジャーナリストがマスコミとそして世の中を動かすんじゃないでしょうか。

ありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いします。

投稿: 木田 | 2005.11.03 23:50

なんか、木田さんにそんなことを言っていただくと恐縮です(汗)
言うは易しで、実は頑張っていないように見える会社の中にも、何人かは頑張っている人達がいて闘っていたりして、1人の取材や記事では必ずしも事実を全方位的にカバーすることはできません。ある程度、文章に勢いをつけないと、おもしろく読んでもらえないけれど、その一方であまりに調子にのりすぎて反対側の人達のやる気を失わせないようにする心配りも忘れてはならないですよね。

 もっとも、そのあたりは、これからブログとかを通してメディアリテラシーが高まり「ジャーナリストやマスコミも、人間で、間違いもあれば、ものの見方は絶対に偏っている。客観的報道なんてありえない」っていう認識が高まっていくことで緩和するのかもしれませんね。

 精進します。

投稿: nobi | 2005.11.04 16:28

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