Web 2.0、HCI、Atom, etc.
昨日、久しぶりに目覚ましをかけずに寝た。待たせている人には申しわけないが、この1週間半は本当にNON STOPだった(いや、まだそうだが)。明らかに睡眠不足の状態で目を覚まし、その日、最大の仕事にとりかかる前に、前日までにやっておかなければならなかった仕事を仕上げる、そんな日々。もうボロボロである。
Blogにも書きたいことがたくさんありつつ、とても書く余裕がない。
電車の乗り換えの合間に、携帯電話からmixiへ投稿するのが精一杯だ。
まだ一段落するまでは、はるか遠い先の夢だけれど、Blogしたいと思っていた話題が完全に忘れて失われてしまう前に、自分宛のメモとして書き残しておこう。
あまり詳しくは書かないが、これだけのメモでも何か感じ取ってくれる人はいるかもしれない。
本来、1エントリー1テーマの方がSEO的にいいのはわかっているけれど、なんか、そこまでする気分になれないので、またしても1エントリー多要素の記事だ(もっとも、ここで書くテーマには少しづつ関連性があるとも思う)。
- Web 2.0:LOHAS
FBSカンファレンスに行ってきた。各セッションの内容もおもしろかったが、小川浩さんが最近、自身のblogに「Web 2.0とLOHASは相通じるものがあると書いた」と聞いて思わずニヤっとしてしまった。小川氏のこの記事には反論も多かったようだが、私もこの両者の間に、同じような時代の空気を感じていたからだ。
詳しく書くと長くなるので、いずれこのメモを見て思い出したら詳細に書くつもりだが、今、思いつくことだけをパラパラと書こう。
私は、同様な理由で、Life Hackとか、日経BPが日本語版を出したREAL SIMPLE日本語版にも同じ時代の空気を感じる。アスキー刊のMacPeople誌の折り込み小冊子で「bossa mac」というコーナー(小冊子の表紙を含む合計9ページ)を監修しているが、ここもややマニアックなMacPeople本誌に欠けている、そんな時代の空気を出すことを狙ったものだ。これまでに取り上げたテーマも「気持ちがいいソフトあります(コード名:右脳で感じるソフトのでき)」、「LifeHack(コード名:IT時代版のおばあちゃんの知恵袋)」、「デスクトップにグリーン(観葉植物)を飾ろう」などなど...
- = Google : Apple
さて、私はこれと同様にGoogleとAppleにも、「似た空気」を感じている。どちらも「ソフトウェアのデザイン」において信じられないほどいい仕事をしている、と思う。
Cnet Japanは、記事にトラックバックが打てるのがおもしろい。最近、書いたGoogle社Angela Leeさんのインタビュー記事では「1つのボタンを左に置くか、右の置くかという問題で30分くらい議論をしていたりする姿をよく見かけます」という部分に反応している人が多いのに驚いた。これはHCI(Human Computer Interaction)という分野を研究している人にとっては当たり前のことだ。ブレンダ・ローレルが編纂した著書「人間のためのコンピューター―インターフェースの発想と展開」では、初期のMacのユーザーインターフェースで1つ1つの要素の裏に一体どれだけ膨大な議論があったかが伝わってくる。
Macが登場し、アップルが「Human Interface Guideline」を著し、Don Normanがアップルに参加し、Nielsen-Norman Groupが世界各地で講演をし、Jacob Nielsenの「Webユーザビリティー」が話題になったとい流れを見ていると、こうしたことはソフトウェアデザインの重要さは、ソフトウェア開発に携わる人々にある程度は伝わっているんじゃないか、と期待してしまうが、実はまだまだなのだと改めて実感してしまった(なにしろ残念なことに「Software Design」という誌名の雑誌にでさえ、HCI的なデザインの話はほとんど載っていない)。
形あるハードウェアのデザイン、プロダクトデザインは多くの人にすぐに認知してもらえる即効性があるが、ソフトのデザインは「このソフト、なんか使いやすいね」とか「気持ちがいいね」といったひとことで終わってしまう。
しかし、そのひとことの裏で、実はマインドシェアの面では、それなりに大きな影響があるのではないかと信じている。
ソフトウェアデザインの話が中心となったが、GoogleとAppleの類似点はこれだけではないと思う。ビジネスモデルなどは後回しで、とにかく「徹底して製品をいいものに仕上げる」その部分へのこだわりにも確かなものがある。とりあえずナンバー1になる本当にいいものを作っておけば、ビジネスモデルなどは、後でついてくる部分もある。
そしてもう1つ似ているのが、他よりも早く「原型」と呼べるサービスを作ってしまうこと。これについては、近いうちに別エントリーで書くつもりだが、これをやられてしまうと、もう他の競合は追従者として「真似のような」製品をつくるしかできなくなってしまう。
- 「アトム」へ
10年前に出版されたニコラス・ネグロポンテのベストセラー書「人間のためのコンピューター―インターフェースの発想と展開」は「アトムからビットへ」を唱って、来るべきデジタルライフスタイル時代の到来を予言した(ネグロポンテは近頃話題の100ドルPCの仕掛人でもある)。
私がここでいう「アトムへ」は、時代が逆戻りする、ということではない。そうではなく、デジタル技術が浸透してきたことで、すべてが「アトム化」、「マイクロ化」されてきた、ということを言いたいのだ。
音楽はアルバム単位でなく曲単位で購入できるようになった、音楽ビデオもDVD単位でなく曲単位で購入できるようになった、Webニュースも毎日お気に入りサイトを訪問するのではなくRSSリーダーで気になった記事だけを拾い読みするようになった、Blogも然りだ(それだけに「うまいタイトルを付ける」のは重要)。Podcastではトーク番組をアトマイズした−−なのにこの記事はモノリシックだ(苦笑)。
アトマイズすることは検索性を高め、これまでまったく見ず知らずだった情報ソースにアクセスするチャンスを増やす。今後はこうしたアトマイズされた情報を、うまく編纂して提供するようなサービスも増えてくることだろう。
例えばPodcastの番組にしても、いろいろなPodcastサイトから特定のテーマにあったものだけを集めてきてそれを1つのRSSとして配信すれば、それがメタPodcastになる。実はdel.icio.usではこれに似たことが既に可能になっている。Podcast放送のうち気に入ったものにだけ「podcast」などのタグをつけておく。あとはそのタグのRSSを購読する。実際に試してみると、うまくいかないのだけれど、それは細かな技術仕様の問題。いずれdel.icio.usのアップデートで解決可能な問題だ。
情報のアトマイズは欲しい情報を次々と集められるといういい側面もあるが、その一方で貴重な時間を使って目を通す情報が、すべて自分向けの偏ったものばかりになってしまうというおそれもある。
以前、Negroponteに言われた「Serendipityも重要だ」と。
- del.icio.us買収
del.icio.usは、私も大好きなサービスのひとつ。nobilog2の右側にも、私が最近del.icio.usした項目が並んでいる。これは私自身にとってのメモでもあり、私がどんなことに興味を持っているかを示す、プロフィールのような側面もある。さらにあなたと私の間で情報を共有する場であり、あとで欲しい情報を振りかえるためのメモでもある。
そのdel.icio.usがYahoo!に買収されたという。これでYahoo!は「Web 2.0」の代表格と言われるサービス2つを手中に入れたことになる(del.icio.usと、もう1つはFlickrだ)。
だが、Yahoo!は実はdel.icio.usを買収しないでも、自身でソーシャルブックマークのサービスを持っていた。日本ではまだ提供していないが、米国では(永遠の!?)β版として提供中だった「My Web 2.0」だ。
18日に発売の月刊アスキーの座談会でYahoo!の宮崎さんが詳しく語ってくれているが「情報の見え方が、これまでとは変わってくる」画期的サービスだった。
そのYahoo!がdel.icio.usを買収したことで、今後、両サービスの間でどのようなシナジーが生まれてくるのかは、かなり気になるところだ。
もっとも、これまでのdel.icio.usのサービスもぜひとも、そのまま使えるようにして欲しい。そうしないと、金に任せて「Web 2.0技術を買い漁る」という悪いイメージを持たれる恐れもある。既に書く人は、そうした視点でYahoo!について書き始めている。
- 次のキラーアプリはカレンダー。じゃあ、その半歩先は?
CNet Japanによれば、次のキラーアプリはカレンダーだそうだ。
たしかに、それを予見させるように私のdel.icio.usでも、最近、カレンダー系サービスがいくつか登録されていた(もっとも、最初の頃はちゃんと「calendar」というタグをつけていなかった)。
で、こういったカレンダー的な情報の扱いが増えてくると、次に何が大事になるのか、Web 2.0的発想で考えてみたのだけれど、それはやはり人間の行動パターンの関連性だろう。
例えば「サンフランシスコに出張」というアクションには「飛行機の手配」、「滞在先の手配」、「荷物の用意」、「移動」といったアクションが関係してくる。
それぞれはさらに「フライトの候補を見る」、「フライトを選択する」、「チケットを手に入れる」、「空港への移動」、「空港からの移動」といったアクションに細分類され、それぞれに所要時間やコストといった要素が絡んでくる。
こうした関連するアクションの関連性をデータ化することで、そこから何かが生まれてきそうな気がする。
同じアクションでも、人によってアプローチの方法が違い、「私は旅程を代理店に伝えて、後は空港に向かうだけ」という人もいるだろうし、細かく飛行場行きのリムジンバスやタクシーまで手配する人もいるかもしれないので、そのあたりは柔軟性が必要だ。
1つ1つのアクションの相互依存性や、メインとなるアクションの事前に行うものか、事後のアクションなのかも重要になることだろう。
そして一番大事なのが、ここから生まれてくるアプリケーションが、あなたの予定を1秒の余裕もなくびっちりと埋めるのではなく、「人生におけるゆとり」をいかに最大限に引き延ばすか、のために使われるかを目指していなければならない。となると、ソフトを監修する人物は「いかに人生を楽しむか」を最大の命題にしたような遊びの達人かな?
これって、なんだか本当にいいアプリケーションの土壌になりそうだし、できれば自分も本腰を入れて関わりたい気がする。出口の見えない執筆業という無限ループの中では、そんなことに関わるのは夢の夢にも思えるが、あえてこのアイディアを、この誰も最後まで読まないであろうエントリーの最後の方に隠すあたり、「自分自身でこれをやりたい」という心の現れなのかもしれない。
- コミュニケーション 2.0
次なるキラーアプリが切望されている分野はもう1つあると思う。それはWeb 2.0時代の新しいコミュニケーションのあり方だ。もはや10年前とは違い電子メールを使ったコミュニケーションは、どちらかといえば不便で、ノイズばかりが多く、極めて非効率的なものに変わってきたと思う。
Web 2.0的な人が愛用するInstant Messengerはその1つの解決策だが、これにはIMを使う時の作法にも変化が必要だ。イントラブログ(または37SignalsのBasecamp的なもの)、そしてWikiなども有用なツールだ。
これらを組み合わせて実現する「脱・メール時代のコミュニケーション」について、MacPeople小冊子内雑誌「bossa mac」の次号(今月末発売)に持論を書いた。4Pの特集では、言いたいことが語り尽くせないが、日々、行うコミュニケーションの形態を見直し、じっくり考えることで、新しいコミュニケーションの道具が生まれてきそうな気がする。
P.S.仙台では、わずかな時間であったが、未来派図画工作のZugaさんにあうことができた。ひとつひとつの作品も素晴らしいが「未来派図画工作通信」と呼ばれるメールマガジンも毎回示唆や新しい視点に富んでいておもしろい。しっかりと最後まで目を通す数少ないメールマガジンだ。本人も物腰がやわらかいいい人で、個人の作品だけでなく、実はこれまでにも本職でつくっているCM作品などをたくさん目にしていた事実に驚いたーー好きな作品をつくるために、お金になるCGをつくるという生活らしいが、とはいえ、仕事の方も吟味して、いい作品だけを作り続けている。
デジタルアート作品は多いが、デジタルのプログラムの部分と表現の部分の両方に通じているのは希少な人材だ。彼がQuartz Composerでつくりだす、数々の素晴らしい作品は、アップル社内でもQuartz Composerの威力をデモするのに用いられていると聞く。だから、彼が書くQuartz Composerの記事が読みたくて、MacPeople誌にも「彼に書いてもらうべき」と提案していた。残念ながら、執筆者は彼ではなくなってしまったが、インタビューベースのコラムは掲載されたので、ぜひそのコラムだけでも読んでみて欲しい(9月号)。
私が「Bossa Mac」で「Perpetual Beta(永遠のベータ版)」を書いていた、ちょうどその時期に自由ダイアリーに「永遠の未完成」を書かれていた点でも何か親近感を覚えていました。
12月 11, 2005 パソコン・インターネット | Permalink
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受信: 2005/12/12 8:18:31
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コメント
Nobi さんのこういう文好きだな。一つのテーマにぎゅっと絞った文もいいけれど、こういう「それで思い出したんだけど」的な接続でつながって行く形式って、頭の中でのコトのつながりが現れて勉強になるし面白い。
投稿: きだ | 2005.12.12 00:40
bossa mac のページは毎月楽しみにしています。
Mac People の真ん中の、何だか心地良さを感じるあの部分は Nobi さんが監修されていたのですね。今月号も待ち遠しいです。
投稿: ken1 | 2005.12.12 00:57
恐れ入ります。年末発売のbossa macの内容は、ちょっとこれまでのbossa macとは違うかもしれません。これまでに比べると、全体的にやや左脳よりな内容になっています。
投稿: nobi | 2005.12.12 02:30