日本は公衆無線LAN先進国!?
東京でiPhoneを本格的に使い始めると公衆無線LANサービスが非常にうっとうしく感じられてくる。
電波が弱いといわれるソフトバンクでも、都内の主要地下鉄駅構内ではほとんど電波が入る。
なので、地下鉄に乗っている時でも、駅に着いたタイミングでメールを受信しようとしたり、Webページを開こうとすれば、ちゃんと見れる。
しかし、ここで問題になるのが、公衆無線LANサービスだ。
私は公衆無線LANサービスヘビーユーザーなので、NTTコミュニケーションのHOTSPOTにも、NTTdocomoのM-ZONEにも入っているのだが、そうすると非常にやっかいだ。
地下鉄が次の駅に停車して、メールを受信しようとするとエラーが出て受信できない。
「なんでだろう?」とよく考えてみると、iPhoneがHOTSPOTの電波を勝手に掴んで接続してしまっているため、「一度、Webブラウザを起動してIDとパスワードをいれるまでメールが受信できないんだ」と改めて気がつかされる。
そうか、それならHOTSPOTで接続してしまえと、Web認証を使ってHOTSPOTのサービスにログインするが、次の駅で、再びメールを受信しようとすると、またうまくいかない。
なんでだろうと調べると、どうやらその駅ではHOTSPOTの電波が弱く、Mzoneの方が電波が強かったために、そちらにつながってしまったのだと気がつく。
最近では、結局、地下鉄に乗っている間は、無線LAN機能をOFFにするのが一番便利なのだ、という結論に至っているが、地下鉄を乗り降りする度に、この切り替えをするのがなかなか面倒くさい。
それにしても、この問題、米国にいる間は、なぜ感じなかったんだろうと振り返ってみた。
よくよく考えてみると、米国では公衆無線LANホットスポットは、「スポット」であって、その場に行って、座る場所を確保してじっくり使い込む場所であり、乗り物に乗って移動すると自動的に、次の駅のアクセスポイントに自動ハンドーバーされて、使い続けられるようなホットスポットはないからだ。
そういう意味では、地下鉄の駅にあるホットスポットは、パソコンから使う分には、非常に便利なサービスとなっており、携帯電話だけでなく「さすが、公衆無線LAN先進国ニッポン!」と世界に誇れるサービスなんじゃないかと思う。
ところで、海外から東京を訪問している人からは、よく「日本は公衆無線LANがない」、「公衆無線LANサービスが遅れている」という言葉を耳にする。
一体、なんで、このような大きな印象のギャップが生まれるのだろう。
原因はいくつかあると思う。
1つはスターバックスコーヒーだ。
欧米では、「スターバックスコーヒー」は確実に公衆無線LANが利用できる場所という印象が強い。
これは、アメリカやヨーロッパの、ほとんどのスターバックスコーヒーに、T-mobile社(がマイクロソフトやインテルと一緒になって広めた)公衆無線LANサービスが敷設されているからで、「スターバックス」を、とりあえず緊急でメールをチェックしたくなった時の駆け込み寺的に見ている人も多いんじゃないかと思う(実際、私もT-mobileの公衆無線LAN1年間使い放題の権利を持っているので米国では「スタバさまさま」だ)。もっとも、最近はスタバとアップルが組んで、iPhoneユーザー専用の特別サービスを提供していることもあり、米国のスタバにおいてはt-mobileの公衆無線LANが、次々にat&t社の無線LANサービスで置き換わっていると外村仁さんから聞いた。
翻って、日本の状況を見てみると、スターバックスで公衆無線LANが敷設されている店舗はほとんどない(一部ある)。これはT-Mobileが、日本で展開していないせいもあるのだろうが、日本では実は公衆無線LANを利用したければTully'sに行った方が、まだ公衆無線LANに巡り会える確率が高い(ただし、有料会員制のHOTSPOTが多いけど)。
つまり、どうしてもメールをチェックしたくて、あわててスタバに駆け込んだ欧米人が、ノートパソコンを開いて、「OMG。スタバなのに、公衆無線LANがない。日本は公衆無線LANがあまり普及していないんだ」と思うんじゃないか、というのが私の1つめの仮説だ。
2つ目の仮説は、日本の「使い勝手よりもセキュリティー」、「とりあえず、最悪の事態が起きたとき、我々はできうるかぎりのセキュリティー対策を講じました」と言い訳できるレベルまでセキュリティー対策を尽くす企業体質が災いしているんじゃないかと思う。
アメリカでも有料の会員制公衆無線LANサービスは多い。実際、t-mobileもそうだ。
ただし、これらのサービスは、無線LANのサービス名が、すぐに見つかるようになっていて、誰でもとりあえずは簡単につなぐことができ、会員じゃない人は、Webブラウザを開くと表示されるスタートページにクレジットカード番号を打ち込んで、その場で会員登録をしたり、1日かぎりの利用を申し込んだりできるようになっている。つまり、「お金はいとわないから、とにかく今すぐに、どうしても使いたいんだ」という人は、使えるわけだ。
ところが、日本の公衆無線LANサービスの多くは、まず無線LANに接続するためにも、WEPキーと呼ばれるパスワードの入力が必要。つまり、あらかじめ別の手段で会員登録をして、お金を払い込んでおかないと、そもそも無線LANにつなぐこともできない、という方式を取っているのだ。
つまり、日本を訪問中の外人が「Tully's」ならHOTSPOTの公衆無線LANが入っていますよ、と聞いて、駆け込んでも、あらかじめ会員登録をしていない限り、いきなり無線LANにつなぐことはできないのだ(BizPortalやアクセスできるWebページを限定したフリー版を一緒に展開しているLivedoor wirelessのように、その場で登録して利用できるサービスもいくつかはある)。
つまり、欧米では、海外からいきなり訪問してきたゲストでも、その場でクレジットカード情報さえ入力すれば、すぐにカフェでインターネットができるが、日本では、例えどんなにインターネットが使いたくても、街中の公衆無線LANホットスポットはほとんど利用できない、ということだ。
米国のPalo Alto周辺では広告ページが表示される無料の公衆無線LANサービスが多いし、ここ4〜5年いっていないが、少なくとも私が知っている時代のlower Manhattanには、誰でもアクセスできるオープンな草の根無線LANが溢れていた。
しかし、米国でも、やはり主流はT-mobileやat&tが展開する商用の無線LANサービスであり、これらのサービスでは、日本と違って無線LANに接続することは、すぐにできても、その後、Webブラウザを使ってIDやパスワード、クレジットカード情報を入力する、という手順が待っているのは、日本と同じだ。
しかし、もしかしたら、これも少しずつ変わりつつあるのかもしれない。
このページで早くから紹介して話題になったEye-Fiの最新製品のEye-Fi Explorerには、Wayportという公衆無線LANサービスプロバイダーの1年分の契約が盛り込まれている(年間19ドルで更新できる)。
つまり、Wayportのサービスが敷設されたマクドナルドや有名ホテル、空港などで、Eye-Fi Explorerのカメラが入ったデジタルカメラの電源を入れると、面倒なWeb認証など一切無しで、デジカメで撮影した写真がいきなりFlickrやfacebookにアップロードされるのだ。
日本で面倒なWeb認証をすっ飛ばす方法としては、livedoor Wirelessが、MACアドレス認証という方法を提案し、実験的に行っていた。
すぐに「MACアドレスなんていくらでもfakeでき、悪用する人が出てくる」といった、悪用者を前提にした議論が始まって、あまり他社には広がらなかったが、こうした認証方法が広がれば、冒頭で触れたiPhone問題も解決できるし、日本でEye-Fiが販売されるようになっても、導入がしやすい。
なんとか、日本の公衆無線LANサービスは、次の一歩を踏み出して、海外からのゲストにも、「やっぱり、日本は公衆無線LAN先進国だ」と言わせて欲しい。
そうそう、日本の公衆無線LANサービスに関して、1つ欧米(というか米国)に圧倒的に負けているポイントがある。青空の下で気持ちよくインターネットできる公衆無線LANスポットの不足だ。
アメリカだと全土にあるわけではないかもしれないが、ニューヨークのBryant ParkやPalo Alto周辺の他、いくつかそういう場所が思い当たる。
8月 14, 2008 パソコン・インターネットiPhone | Permalink
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コメント
その欧米人の気持ち、わかります。ワタシも、帰国した日に(出産予定日だった友達の情報が知りたくて)成田のスタバで「Wi-Fi使えますか?」と聞いちゃったクチなので。
日本のインフラが進んでいるのはよくわかっているのですが、Wi-Fi天国の街に住んでいた身としては、「トーキョー使えねー」というのが第一印象でした。
公園でもビーチでも、パブも電車もWi-Fiには不自由しない生活(なのに、自宅のブロードバンドは不具合続出でしたが....でも、そんなときは近所のカフェやパブ、お店が開いてない早朝なら公園で繋げた)に比べると、いまは不自由極まりないです。
nobiさんが2番目の仮説で述べているように、必要なときにその場で有料回線に繋げないのにも、びっくりしました。
ゆくゆくは、「フリーWiFi当たり前」ぐらいになって欲しいと切に願います。地デジチューナーの配布より先決だと思う... いや、マジで。
ワタシが住んでいたところは、小さな街だったのであまりいい例にはなりませんが、その後遅れてロンドンでもフリーWiFiを提供するパブが増えて来ました。
まぁ、もっともトーキョーのカフェなんかは1杯のコーヒーで居座られるのは避けたいところなんでしょうけどねぇ... せめてパブリックな場所からでも始めて欲しいですね。
投稿: yuki | 2008.08.14 13:15
BTがもたもたしていてADSL普及が遅れていたにも関わらず(いや、それだからこそ)UKはインターネットカフェ天国になって、そこからフリーWifiに進化したんですかね?
Tubeの駅ってWifi使えるんでしたっけ?
少なくともOxfordとか大きい駅はあるみたいですね。
http://www.stagecoachgroup.com/scg/media/press/pr2007/2007-02-06/
UKだと、知らないエリアにいったときのWifi駆け込み寺は、やはりCAFFÈ NEROなんでしょうか?
それ以外のカフェやPubもWifi結構、多いんですか?
それにしても、今、CAFFÈ NEROのWebページ見たらFAIR TRADEも実践しているんですね。
さすが最先端!
http://www.caffenero.com/StoreLocator.asp
それに比べてParisのヨーロッパ初のインターネットカフェを唱っていたCafe Orbitalがなくなってしまったのは、あまりにも残念すぎる...
投稿: nobi | 2008.08.14 13:35
そうそう、例によってshyな方々のコメントはこちら:
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://nobi.cocolog-nifty.com/nobilog2/2008/08/lan_a644.html
投稿: nobi | 2008.08.14 14:01
海外のことはよく分かりませんが、
日本のWiFiってなぜか駅中心に広がっているんですよね。(歴史的な経緯ともいいますか)
駅って電車に乗る場所で、東京だと2,3分待っていればきてしまうので、WEB認証で認証している間に電車が発車してしまう、なんてざらにあります。
APの数は先進国なのかもしれませんが、実際のAP単位の利用率で計れば圧倒的にムダな(非効率な)APが多いんじゃないでしょうか?
本当は、公園とかカフェだとか、有名な待ち合わせ場所とかにあって欲しいと思うんですよ。
青空の下で公園で遊んでいる子どもたちの様子を見ながらチャットする親とか出てくるかもしれないですね。
投稿: hiro | 2008.08.14 14:27
そうですね。
そのおかげでdokoyoという便利なサービスもあります:
http://dokoyo.jp/
私も最初は、なんか電車が来ちゃうと、乗らなきゃならないような脅迫観念に追われてそうだったんですが、
最近は用事が済むまで、ホームのベンチでじっくりメールチェックとか、iPhoneのメール受信が完了していなければ、
電車を1本見送る、と言う風になりました。
でも、公園とか、大きなビル内の広場とか、図書館とか、
心地よいオープンスペースで使えるようにして欲しいという気持ちは同じです。
なので、NTTdocomo、au、iPhone(ソフトバンク)に加えて
HOTSPOT、livedoor wireless、モバイルポイント、Mzoneの契約に加えて、
EM-ONE+WMWifi Routerも常に持ち歩いてしまいます。
これ全部、圧縮してiPhoneとおサイフ携帯だけにできたら、かなり理想的なのですが...
もっとも、NTTcommのHOTSPOTサービスは、海外のホットスポットプロバイダーとのローミング契約が充実しているので、ヨーロッパに行く時のことを考えると止められません(米国ではT-mobileを使用)
投稿: nobi | 2008.08.14 16:24
私も、海外からに日本に訪れるという身として、日本の公衆無線LANサービスは「遅れている」という印象です。yuki さんが言いたいことをすべてカバーしてくれていますが、ちょっとだけ。
特に、nobi さんの2番目の仮説の部分が痛いんですよ。一言で言うと、あるんだけどアクセスできない。門が開いていない。
スポットは結構見つかる。でもその場で契約というのができない。日本の内に住所を持っていて契約している人向けなんですね。無料 WiFi スポットも Cafe や書店を覗いてみてもほとんどない。特に無料であって欲しい訳ではなくて、戸口が開いている場所が欲しいんだけなんです。可笑しかったのが HOTSPOT の 1 day passport という一時利用サービス。既に繋がっていないとオンラインで契約できない。でもファミリーマートでも購入できるんですね。インターネットのない状態で、ファミリーマート探して、次に HOTSPOT のある場所を探して、今回の日本行きで、必要にかられて一度そういう借り物競走みたいなことをやりました。ありえない。
ただ、これだけ3Gネットワークと携帯サービスが充実していると、それと競合する PC + WiFi へのサービスが遅れてしまうのは無理もないのでしょうか。iPhone がその構図を変えることを期待。
投稿: きだ | 2008.08.14 19:33
日本の公衆無線LANサービスは、NTTコミュニケーション+モスバーガーの努力で、
世界で見てもかなり早い時期に普及したと思うんですが、
その時に、会社のカルチャーの影響もあると思うんですが「まずはセキュリティー」、「なりすましにどう対処する?」、「サイバーテロが起きないようにどうする?」、「P2Pに使われたら」とあらゆる最悪ケースを想定した現在の公衆無線LANのベースができてしまったというのが、私の印象です。
で、後続のサービスは、さらに使い勝手のいいサービスではなくって、
さらに相対的にみてスペックのいいサービスを追求してしまう。
つまり、HOTSPOTよりも「安い」だとか「スポットが多い」だとかは、まだうれしいですが、
中には「最新の(Macには対応していない)セキュリティー技術を使う」なんていうサービスもいっぱい。
日本に住んでいない人がどうするかなんて視界にすら入っていなかったかもしれません。
(だいたい、日本の公衆無線LAN黎明期に、日本にもインターネットカフェがあるにはあったのですが、どれも日本人をターゲットにした物で、すぐに廃れてしまいました。これと比べると、ヨーロッパなんかのインターネットカフェ文化は、明らかに旅行者をターゲットにして成功していますよね)。
日本の公衆無線LANサービスが、「その場で契約できる方式」を採用しなかったことで、
いったいどれだけ多くのビジネスチャンスを失ってきたか、誰かに金額ベースで計算して欲しいと思います。
もっとも、U.S.もパラダイス鎖国の国だから、t-mobileのサービスにしても、一時、U.S.の電話番号がないと登録ができないとか、ありましたけどね...
投稿: nobi | 2008.08.14 22:57
iPhoneの無線LANに関しては、Devicescape for iPhoneの正式リリースを待望しております。
http://www.devicescape.com/
投稿: Maverick | 2008.08.15 01:33
イギリスだと、ビジネスマンが多く使っているのはスターバックスですね。
やはりT-Mobile(イギリスではまだスタバ→T-Mobile)が使えるのが強いのかも。Cafe NEROは、別の会社だったと思います。あとは、日本と同様にマクドナルドかな。マクドナルドはFree Wi-Fiの展開を始めたようです http://www.mcdonalds.co.uk/pages/companyinfo/freewifi.html
ちなみに、駅や電車の無線LANは、やはりT-mobile優勢ですね。
地下鉄はやってなさそう....。そこで立ち止まってinternetに繋ぐひとはいないですね・笑
あとは、地域(自治体)の本気度も大きいと思います。ロンドンだったらイズリントンあたりが一時期頑張っていましたが、その後どうなったんだろう?
ブライトンにお越しの際には参考にしてください→http://www.looseconnection.com/brighton/
もちろんこれ以外にもたくさん対応しているカフェやパブはありますし、町中でもビーチでも繋がります。行くときはお勧めのベジカフェとWi-Fi用のパスワードをこっそり教えますよ(笑)
インターネットカフェ=ツーリストは、言われてみればそうですね。Easy Internetとか。
ヨーロッパ内ではお世話になりました。
ロンドンのインターネットカフェの求人の条件には、たいてい英語以外の言語が話せる人って書いてあったし(笑)
投稿: yuki | 2008.08.15 07:55
ブライトンのビーチでつながるのはちょっとズル過ぎ!止めて欲しい(笑)
それに東京で対抗するにはどこだろう?
お台場のビーチじゃ物足りないし、早朝の明治神宮とか?桜の頃の井の頭公園とか目黒川周辺?
うーん、そもそも東京だと自然だけで対抗するのは厳しいか。
投稿: nobi | 2008.08.15 11:46
Maverickさん、
見逃していました。
Devicescape出たらうれしいですね。
ただ、ここの掲示板にも書いてありますが、
今のところ、アップルのSDKの関係で難しそうなんですよね。
それにEye-Fi的なデバイスでも、そもそもアプリのインストールができないし...
何かこれが国際標準的なものになって、うまくメーカーレベルで対応してくれればいいのだけれど。
って、本来はIEEE 802.11xがそうなるべきだったのかな?
投稿: nobi | 2008.08.15 12:37
ipod touch + 公衆無線LANってじっくり腰を据えて作業する分には便利ですよね。
ただipod に限らず無線LANの優先順位が付けられない機器が多すぎます。
FONなんかでもプレイベートAPを優先したいのに勝手にFON APの方につながったりしちゃいますし。
あとパスワード設定のしてない野良APに知らない間につながっちゃうのもセキュリティ的にどうなのでしょう??
接続の確認をするAPとしないAPを別々に登録する方法とかあるのかな?
EM-ONE+WMWifi Routerも便利ですがどうも安定性にかける・・・
投稿: ぱぱ | 2008.09.08 13:51