2009.01.02

ブログは会話 + 情報のディスカバリー

THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2007: DAY 2

「ブログは会話」これは伊藤穣一さんがよく言う言葉。

ブログの記事に1点の間違いもない完璧なものを求められていたら、堅苦しくて何も投稿できない。
 ある程度、思い込みや勘違いもコミコミにして、ある程度は「エイヤ!」で投稿するからこそ自分の意見が言える。それだけにブログでは記事そのものだけではなく、コメント(や場合によってはTrackback、人によってはdel.icio.usやはてなブックマークも)での対話までも含めて1つのコンテンツと捉えて欲しい。

 ただ、今日のブログが至らないところは(そしてSNSの方が進んでいる部分)、自分が書き込んだコメントに対して返信があっても、再びそのブログを訪問しないとわからないところ。
 この問題を解決すべく、しばらく、coCommentを試したが、残念ながら期待した変化は得られなかった(サービス自体はよくできているので、今後、また機会をつくって再挑戦したい)。
 そんな中、昨年末、Six Apart社がTypePad Connectというサービスを開始。これに衝撃を受けた。

 TypePadのブログに、TypePad ConnectのIDでログインしてからコメントを書き込むと、そのコメントに対して、返信があったときに、それがメールで送られてくる。しかも、そのメールに返信する形で、メールソフト(あるいはiPhone)からコメント返しができるのだ。
 これは「ブログの会話化」を、さらに一歩、押し進める革新的技術だろう。

 さて、昨日のブログにいしたにさんからトラックバックがあった。
みたいもん: すべてが記録される時代のログ:私的原体験編

 この記事で私の記事と一緒に平田さんの記事が紹介されている。

dh memoranda:次になにをするべきなのか

この平田さんの記事を読んで、いくつか「Web 2.0 in your pocket」的な視点で思い出したことがある。

続きを読む "ブログは会話 + 情報のディスカバリー"

| | コメント (2) | トラックバック (2)

2008.12.24

不幸を呼ぶテクノロジー

061121_1241~0001.jpg
メールを10通書き上げたので、ご褒美にブログを書かせてもらおう。

今年の春頃から、すっかり執筆業から講演業とコンサルティング業に鞍替えしている筆者だが、それでもパソコンに向かって書き物をしていることが多い。
現在、唯一の連載で、いつも遅れがちな「Apple's Eye」の原稿を書いていることもあるが、そうでないときは


  1. プレゼンのスライドをつくっている
    毎回、半分以上は同じスライドを使うくせに、講演前日に4〜5時間かけて、オーディエンスにあった構成を考えて順番をやりくりしている
  2. 電子メールソフトと格闘している

のどちらかだ。トータル時間でいうと、圧倒的に後者が大きい。

パソコンを使い始めの人や、あまりパソコンどっぷりでない仕事をしている人にとってはそうでもないかもしれないが、仕事柄情報のハブになりやすい人間にとって電子メールは、まったくもって不幸のテクノロジーだ。
筆者が利用している全メールアドレスに届くメール数の総数は、1日約4000〜5000通だ。
「多い」と驚かれる方もいるかもしれないが、2007年に急逝されたitojunさんに話しを聞いたところ、彼はこの倍近く受信されていたようだ。
もちろん、すべてが人手によって送られてきたメールではなく、迷惑メールも含めた数だが、'93〜4年頃から同じ、文字数の少ないメールアドレスを使い続けていると、こうなってもおかしくない。

このうち重要メール用として使っているアドレスに届くメール数が1日数百通。
おそらく700〜800通だが、前からそうした方がいいと思いながら、ずっと避けていたのだが、
今年、ついに重い腰をあげてGmailに切り替えたおかげで、目にするメールの数はかなり減った。
ほとんどの迷惑メールは、一度も目に触れることなく迷惑メールフォルダに入り、数週間後には自動的に抹消される。

とはいえ、そうしてフィルタリングされた後でも、1日に読まなければならないメールが100通を下ることはない。
さらに、返事をしたり、カレンダーにつけたり、電話をかけたり、といったアクションを起こさなければならないメールが、1日に最低でも20通はある。

電子メールという無料通信手段の登場で、気軽にコミュニケーションができるようになったことは、多くのいいことをもたらしたが、その一方で、それが蓄積していくと、とんでもなく大きな不幸も招くことになる。

今年だったか、去年だったか、元々はパソコン雑誌だった「月刊アスキー」が「reborn」するといって、ビジネス誌に生まれ変わり、その後、ビジネスアスキーという雑誌に名前を変えていった。
このビジネス雑誌時代の月刊アスキーで、ただ1つだけ今でも印象に残っている記事がある。

 「数字で見るなんとか」という連載の記事で、毎日ビジネスでやりとりされている電子メールの本当のコストを探ってみよう、というものだった。


月刊 ascii (アスキー) 2007年 02月号 [雑誌]
月刊 ascii (アスキー) 2007年 02月号 [雑誌]

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

(この号かどうか自信無しなので注意)

 IT度の高い企業だと、みんな後で何か言われても言い訳できるように「とりあえず、いっておきましたよね。みせましたよね」といわんばかりに、上司や同僚をccに入れまくる傾向が強まっている。
 こうやって役職の位が上の人ほど、電子メールが雪だるま式に増えていく。
(一説にはマネージャークラスで1日数十通、ディレクタークラスで100通、その上が200通くらいとも言われる。もっとも、これは企業文化のIT度によって違うだろう)。

 そして役職が上の人ほど時給が高いとすると、みんなが無料だと思って、やりとりしている電子メールが、会社の人的リソースの貴重なコストのかかっている勤務時間を、深刻に浪費している、といった記事だった(うろ覚え)。
 まったく、その通りだと思う。

 不用意に上司にCCをしている人は、上司の受信箱がどうなっているかを想像し、CCしたからといって読まれているわけでもなければ、印象にすら残っている可能性が少ないことを再認識した方がいいだろう。人間が1日に脳で処理できる情報量には(きっと)限界がある。

 私は1970年代から、プログラムリストの打ち込みや、チャット(今で言うインスタントメッセンジャー)で鍛えてきたタイピング速度があり、そこいらへんの人に負けない速度でタイプできる自信。ノっているときなら、日本語でも話すより早くタイプする自信もある。

 それだけに、数年前までは、相手の状況を無視してかかってくる電話が嫌いで、電話をかける前に電子メールやインスタントメッセンジャーで、用件を伝えて欲しいと思っていた。
 しかし、今は(インスタントメッセンジャーはいいが)電子メールは避けて欲しいと思うし、送られてきたメールにも電話で返事をしてしまうことが増えた。

 というのも、多くのメールは、どうせ、返事をしても、また1通、返信しなければならないメールが増えるだけ、というのが見えている。つまり、本題に入る前のフリに過ぎないことがわかっているのだ。

 それに、この受信箱というものが、単純なTo Doリストのように、1件ずつ処理していけば、減っていくというのであれば、まだ頑張ろうという気にもなる。
 しかし、実際にはそうではなく、1件のメールを処理した頃には、さらに2〜3件くらいメールが増えているのだ。
 これは毎日、延々と同じ道路のドリリングと舗装をさせられているようなもので拷問に近い。

もちろん、こちらも人間。
すべてのメールが憂鬱というわけではないし、書いていて楽しいメールもある。
読者の方などから送られてくるメールも、時間があるときは(できるだけ)もれなく1通1通誠心誠意を返事を書いてきたつもりだし、以前にメールをもらった読者に、こちらから「例の情報、あれわかりましたよ」とか「その後、どうですか?」といった具合に、こちらからメールを送りたいと思っていることもある。
 ただ、私にとって、既に電子メールというコミュニケーション手段が、まるで音楽がガンガンになっているディスコの大型スピーカーの真横で、風邪をひいて喉が痛いのに、1時間マイクの壊れた会場で大声で講演して声まで枯れてしまった状態で、耳栓をした友人と話すくらいに無理がある手段になりつつあるのだ。

 いや、実は数年前からそうで、だから、一時はmixiのメールに逃げていたが、こちらも一時増え過ぎてしまい(最近ではそもそもあまりログインしなくなってしまった)、Facebokkも同様で、Twitterのメッセージも。結局、分散させても、そちらの手段がいいとわかった時点で、そのチャネルへのコミュニケーションの集中が起きてしまい、本質的な解決にならない(いや、あまり分散させると、今度はあちらこちらチェックしないといけない、という問題が発生してくる)。

 いずれにしても、ここ10年のテクノロジーは、検索エンジンにしても、アグリゲーターにしても、人々の便利、効率的、欲しいといった言葉に流されて、人間の能力を超えて、情報を集中させる結果を招き、それによって人間をどんどん不幸にする結果にいたってしまったんじゃないだろうか。

さて、そんな状況の中、希望の光はあるのか?

おそらく来年、中頃くらいまでの間は、これが私の研究テーマの1つになり、nobilog2の中心テーマの1つになるだろう。

でも、いくつかの光明は見え始めている。

続きを読む "不幸を呼ぶテクノロジー"

| | コメント (7) | トラックバック (1)

2008.10.01

理想からの発想 vs 問題点からの発想

英語版blog、"nobilog returns"に書いたので、こちらにも。

nobilog returns: self-checkout cashier au japon

先日、ちょっと感動した大崎ゲートシティーのRELUCK。
photo.jpg

ここ、なんとお客さんが自己申告清算してEdyで支払える、という画期的なシステムを導入しているのだ。

photo.jpg

Edyをインストールしたおサイフケータイをカードリーダーに置いたら、
買ってきた商品のバーコードをを自分でスキャン。
合計金額を確認してOKボタンを押すと、清算完了。

あとは自分で商品を袋詰めにして(あるいは、もっとエコに持っている自分の鞄に入れて)
レシートを取って立ち去る。

この企画を、この日本で通した人達も、こういうサービスを受け入れている大崎ゲートシティーも
本当に先進的だしスゴいと思う。

これこそ我々が求めるべき「理想の未来」なんじゃないかと思う。

続きを読む "理想からの発想 vs 問題点からの発想"

| | コメント (8) | トラックバック (0)

2008.08.31

iPhoneによるイベントガイドのモデルケース

photo.jpg
銀座で明日(9月1日 月曜日)まで開催中の「デザイン物産展ニッポン」。
D&Departmentナガオカケンメイさんがコミッショナーを務めるイベントで、
私も友人にチケットをもらっているし、なんとか明日の最終日に滑り込みで見てこようと思っている。
(今日のagnes b.は行けなかった...悔しい)。

この「デザイン物産展ニッポン」のWebページがiPhoneに対応しているということをお宝鑑定団のブログで知った:
Macお宝鑑定団Blog「羅針盤」:松屋銀座店、iPhone 3Gコンテンツ「DESIGN BUSSAN NIPPON」公開


iPhone/iPod touchユーザーは、ぜひこちらのURLに接続してみて欲しい:
http://designbussan.jp/


実際にiPhoneからアクセスしてみると、これがシンプルながら驚くほどよくできている。
ユーザーインターフェースの見やすさ、わかりやすさも、さることながら
ムービーまでiPhoneのサイズにあわせてあるあたりちょっと感動した。
photo.jpgphoto.jpg
photo.jpgphoto.jpg

これは今後、世界で開催されるさまざまなイベントが手本とすべきガイドなんじゃないだろうか
(ということで、後で、英語のブログでも紹介しよう)。

イベントに行くモチベーションを高める案内としても機能し、
イベント会場ではガイドとなり、
そしてイベントを訪れた後も、「あれは何だっけ?」と調べられるツールとして使えそうだ。


ガイドとしての便利さは、未体験なので、明日、試すつもりだ。記事もそれからでもよかったが、もしかしたら行きたいのにイベントのことを忘れている人がいるかもしれないと思いイベントの案内も兼ねて記事を書くことにした。

なお、お宝のページからもリンクされているが、ITmediaのこちらの記事がガイドの舞台裏などを細かく紹介している。
ITmedia Enterprise: 伝統に“新しい風”:
iPhoneを利用した展示会ガイダンス――老舗百貨店 松屋が採用


もっとも、このシステムを他のイベントにも広げて行くとなると、
iPhoneだと「携帯電話禁止/カメラ禁止」の美術館での利用が問題になるかもしれない。

そういう意味ではiPod touchって電話もできなければ、カメラもないし、
ヘッドホンがないと音を聞けないし、音声ガイドとしては絶妙な製品なのかも。

9月9日に発表されそうな新iPod touch、その当たりの視点も入っていることに期待!

そうそう、銀座の松屋に行き損ねた人。もし、9月9日よりも前に、九品仏のD&Departmentに行くことがあれば、行きか帰りにちょっとだけ足を伸ばしてLa Rucheにも行ってみましょう(駅から見てD&Departmentと反対方向だけれど):
nobilog2: La Ruche、今年は9月15日まで

| | コメント (4) | トラックバック (1)

2008.08.17

本屋とセレンディピティーの話

2008-08-14 15:56:11 +0900
先日、14日、お盆のさなか、パスポートの更新のために銀座の交通会館に行った。
お盆の時期は、東京はいつもガラガラ、だから人もいないだろうと思っていたらとんでもない勘違い。
交通会館の人に「この時期が1年で一番混むんですよ」と言われた。
1年の中でも、このお盆の2日間が一番混むらしく、帰宅後ホームページを見ると、たしかにそう書いてあった(今は書いてない)。
 2009年以降のお盆にパスポートを取得/更新しようと思っている人には、お盆が終わった翌日以降にいくことをお勧めしておきたい。あの大行列に並ぶくらいなら日にちをずらした方が、人生の時間を有効に使える(もっとも整理券をもらって、しばらくITOCIA辺りをうろつくという手もあるが。そういえば交通会館の3階だか4階から外に出られるというのを今回初めて知った。上の写真はその時の写真だ)。

 あまりにも時間があまったので、交通会館の喫茶店(分煙しているところが少ないので煙が嫌な人は注意)で時間をつぶし、屋上で写真を取り、その後、中にある三省堂書店に行った。
 よく考えてみると、ここのところずっと忙しく、寄り道時間が少なかったので、リアルの書店に行くのは本当に久しぶりだった。
 で、思ったのだが、やはりリアルの書店は、本当に危ない。
 物欲が刺激されまくる。
 もしかしたら、交通会館の三省堂が特にそうなのかもしれないが、視界に入ってくる本、視界に入ってくる本、すべてが眩しくて、興味をそそられるのだ。

B型の時代は終わった?

 Amazonも確かに便利だ。
 効率的に自分の欲しい本を見つけられる。
 そして、ややお仕着せの「お勧めの本」も出てくる。
 でも、それは例えばiPodの本を買うと、iPod関連の他の本が出てくるという類いの物で、自分の他の趣味にまで広がっているわけではない。
 私はIT関係も好きなら、現代アートも好きで、デザインや建築にも興味があり、イノベーションの話しも好き、旅行の話しも好きならば、雑誌「REAL SIMPLE」(の米国版)に出てきそうな話題も好きだ。
好きな雑誌をあげると私の一貫性のなさが見えてくるかもしれない。
なんといっても好きなのは「Noblesse」、「Paper Sky」、「和楽」、「Pen」といった雑誌。
でも、「日経アソシエ」や最近の「月刊ascii」も嫌いじゃない(昔は昔の月刊アスキーが好きだったが)。

アメリカに行くと帰りの空港で必ず「REAL SIMPLE」の最新号を買って帰る(私はあれはLife Hack本だと信じて疑わない)。
 そんな多様な関心を持つ私にはAmazonのレコメンデーションは幅が狭すぎる。
(こちらの麻倉さんのインタビューで言うところのコクーンのような存在で、まだSPIDERの域には達していない)。

その点、リアル書店だと、360度の視界の中に、
次から次へと魅力的な本の表紙やタイトルが立体的に飛び込んできて物欲を刺激されまくるのだ。
あれはかなり危険な場所と言えよう。

もちろん、リアルな書店には、Amazonにあるようなブックレビューはなく、
「果たして本当にこの本でいいのか?」不安に思わされるところもある。
しかし、その時、ふと思った。
実はそれを自分で判断するということこそが、失ってはならない「野生の勘」の1つなんじゃないかと。

昔、学生の頃は、参考書を買うときも、似たようなタイプの2大参考書、
果たしてどっちの方が本当にわかりやすいのか、など常に野生の勘を試されていた。
で、自分でパラパラっとページをめくり15分ほど比較した後で、
「こっちだ、こっちに違いない!」と野生の勘で判断していた(そして時にはその1週間後に「やっぱり、あっちだった」と敗北宣言をして、もう1冊を買い直していた。そこで、このままもう片方を買うのは悔しいからと反抗して第3の選択肢を選んでしまい、さらに1週間後、「今度こそ負けた」ともう1つの2大参考書を買ったこともある)。

Amazonのレビューは、確かに便利だし、非常に参考になる。
でも、そればっかりに頼っていると自分の判断力が鈍ってしまう。
この野生の勘を常に、ある一定レベルに保っておくためにも、リアルの本屋にはしばしば足を運ぶべきだと、改めて思った。

もちろん、私はAmazonも大好きだし、Amazonにもいいところがある。
特にAmazonを活用していて、ブログも持っている人には、ぜひともAmazonアソシエイトプログラムを活用することをお勧めしたい。

続きを読む "本屋とセレンディピティーの話"

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2008.08.13

卵と鶏と発想の飛躍と

countervoid050518

ブログはやはり思い立ったときに更新しないとダメだ。
書こうと思って、溜込んで後になって書こうとすると、
本当に書きたかったことを忘れて後で後悔する。

1つ前の記事「何を出発点にして、それをどう評価していくのか」は、
「IT系ニュース媒体の写真にかけられたモザイク」と「器械体操の評価方法」を出発点に、それまでなかった新しい技術を、何を土台にして、どのベクトルで評価すべきかについて書いた。
でも、実はこの議論だけでは足りず、もう1つの視点を書き加えようと思っていたことを、後になって思い出した。

前の記事に対してmixi経由で、それでもやはり「もし何かあった場合に、被害に遭って嫌な気持ちになったりする人の側に立って考えると、モザイクは仕方がない」というコメントを頂いた。
まったく持ってその通りで、この議論は、卵が先か鶏が先かの堂々巡りな部分がある。
実は先週末、寝付けない夜に、この卵と鶏の議論を頭の中で繰り返していた。

その後、私が以前、ちょっとやりたいと考えているあるプロジェクトのことを思い出し、
それがきっかけで、性善説を核にした方がいい、という結論にたどり着いたのだ。

持論を押し付けるつもりはないが、ものの考え方の一つとして、みなさんの意見を伺えればうれしい。

卵と鶏の議論は、メビウスの輪のような物で、この輪にばかり目を向けていたのでは、
いつまで立っても解決の糸口は見つからない。
そこで、もしすべてがうまくいって健全な社会が成り立ったらと仮定してみたのだ。

そういう社会が成り立ったとしたら、おそらくそこでは、
人々は他の人が困っていれば手を貸すが、必要以上には干渉しない。
そしてプライバシーへの過剰反応はなくなるだろう。

革新的技術の悪いところは、開発者に正々堂々と正面から指摘するが、
それはそれを、もっとよくしてもらおうという建設的な提案であって、
相手をおとしめるのが目的ではないし、ちゃんといいところも評価するだろう。

果たしてそういった理想は成り立つものか?
完全に成り立つかというと自信はないが、
少なくとも今から十数年くらい前までは、もう少し世の中のバランスが健全よりだった気がする。
ということは、もう少し舵をそっちよりに振ってもいいのではないか。
そうやって考えたら、やはりアクションの源流の方から、
少しずつ健全路線に戻していってもいいんじゃないかと思えてきたのだ。
(記事を早く書き上げるために私基準の「健全」というやや抽象的な表現をしていることをお詫びしたい)。

さて、ここで私をこの思いに至らせた、
ちょっとやりたいと思っているプロジェクトについても、少しだけ触れておこう。

続きを読む "卵と鶏と発想の飛躍と"

| | コメント (6) | トラックバック (0)

何を出発点にして、それをどう評価していくのか

[UPDATE: 最初の記事では、注意はしていたのですが、ascii.jpだけがそういう処置をしているような誤解を一部の人に与えてしまったようなので、UPDATEして、asciiだけではないことを改めて強調しておきました]

IMG_8787.JPG

またしてもイノベーションを生み出すための議論だ。
ここ数日、ずっと考えていたことだが、これから忙しくなって、
またブログの更新が滞るかもしれないので、そうなる前に書き残し、
人々の議論の種にしてもらおうと思う。

今の世の中では、せっかく素晴らしい製品・サービスを開発しても、
すぐにそれを悪用する人が出てきて困ることがある。
それだけに、新しい製品・サービスに対する評価も、保守的で厳しくなることが多い。

「それはこんな犯罪に使われるんじゃないか」であるとか、
「そんなものを出して、もし、犯罪に使う人が出てきたら誰が責任を取る」といった類いの議論だ。
確かに、せっかくの便利な技術も、悪意を持った人や犯罪者を利することになっては困る。

しかし、だからといって悪意を持った人や犯罪者を基準にものごとを考えていては、
いつまでも立っても、その悪意中心のパラダイムから抜けられないんじゃないかと、ちょっと心配だ。

知らない人は(もしかしたら知っている人も)全員、悪事をたくらんでいるという性悪説に基づいてものごとを判断していたら、いつまでも悪意が溢れていることが前提になってしまう。

でも、我々が本当に求めているのは悪意のない、健全な社会のはずだ。

話しがちょっと抽象的過ぎるので具体例をあげよう。

最近、Webのニュース媒体の街頭取材の記事では、
記事中の写真に写っている人の顔にモザイクがかけてある。
私はあれが何か不気味かつ病的に感じられて生理的に受け付けない。

こちらのascii24でApple Store Sapporoのオープンの取材記事を見て欲しい:
開店までの人々のドラマを追体験! Apple Store Sapporoがオープン

取材中は、オープニングイベントに来ていた子供たちの明るい笑顔を撮り、得意げだったのだが、いざ記事になってみると、その子供たちの笑顔の上にモザイクがかかっていてショックを受けた。

jd_04121201

{ここから追記}
ここで明記しておくが、これはascii24(現ascii.jp)だけがそうしているわけでない。
インプレスWATCHやITmediaの一部など、他の媒体も皆、同じ処理を施している。
(といっても、そういう処理を施しているのはIT系の媒体が多い!?)

プライバシー保護のため仕方がない処理だと言うことで、本来は顔が映らないように後ろから撮るであるとか、遠目に撮るのが理想だと言われたことは、媒体と編集者のために付け加えておこう。

{追記ここまで}

当時、この辺りの状況に詳しい他出版社の編集者と、話しをつきつめていったところ、
要するに一般の人の顔写真を特定可能なURLに載せておくと、
掲示板などに、その人についての評論や、あることないこと書き連ねて、そのページにリンクをしてくる輩がいるから、一般人の顔写真は載せない方がいいというのだ。

その時は「なるほど」とも思ったが、やはり何かすっきりしないものがある。

だって、それってどう考えても、悪いのは、掲示板にそういう書き込みをする輩の方であって、
そういう人達のために、世の中のシステムをあわせていってしまうと、
どんどん、そういう行為が当たり前になっていってしまう気がしてならない。
そもそも、そんなモザイクのかかった、不気味な写真ばかりみて育つ子供たちのことを考えてもかわいそうになるし、そうした中から、そういう不健全な方向に物事を考える輩が育ってしまうんじゃないかと思うと不安でしょうがない。

それよりは、モザイクを外して、一般の人々の素敵な笑顔の写真を一枚でも多く掲載した方が、
健全な社会を育む上でも、今の社会を理想の社会に近づけて行く上でもいいんじゃないかと思えてくる。

もちろん、世の中には、残念ながら、常に悪意を持った人達がいるわけで、
そうした人々に対しての何かしらの対策を考える必要はあるだろう。

だが、私はものごとの考えのベースとなる部分、核となる部分、出発点となる部分は、optimisitcな性善説にしておかないとイケナイんじゃないかと思えてしょうがない。

続きを読む "何を出発点にして、それをどう評価していくのか"

| | コメント (3) | トラックバック (1)

2008.08.01

iPhoneを通して考える通信のこれから:NetShareとNet Neutrality

iPhoneを無線ルーター化するアプリケーション、「NetShare」が登場した。

Engadget Japanese: iPhone 3GをWiFiモデム化する公認アプリNetShare、脱獄不要

だが、このソフトはその後、すぐに取り下げられる。
NetShare no longer available

iPhone開発者の規約に違反したこのソフトが、一時的とはいえApp Storeに通されたということは、App Storeの審査はアプリケーション単位で行うというよりは、企業単位の審査に基づいていることが明らかになった、と言えそうだ。今後、同ソフトを提供したNullriver社(他に「Tuner Internet Radio」を提供)にどのような処分が下されるかは気になるところだ。


ところで、このiPhoneの無線ルーター化については、さまざまな見方をすることができると思う。

先日、drikinとのSkypeチャットで、こちらのブログの記事が話題になった。

Thirのはてな日記:iPhone 3Gをモデム代わりにしてはいけない

回線を圧迫する無線ルーター利用は、他のiPhoneユーザーに迷惑をかけるからやらない方がいい、という内容で、正論だし、私もおおむね賛成だ。

しかし、その一方で、私はこの考え方には、賞味期限を設定する必要があるとも思っている。

私は今年から来年にかけては、まさに「ケータイ・ビッグバン」とも言える年であり、3つのレイヤーでさまざまな動きが活発化すると考えている(事業形態のレイヤー、端末テクノロジーのレイヤー、通信技術のレイヤー)。

 このうち通信技術のレイヤーではWiMAXやHSUPA、EV-DO Rev. Aといった通信技術(そしてその先にあるLTEなど)は、自宅の無線LANと区別がつかないほど高速な通信が売りになっており、おそらく携帯キャリア各社も「高速通信」をウリにしてくるはずだ。

 にも、関わらず、実際に契約を交わして端末を買ってみると「ネットワークに負担がかかるので、他の人のことを考えて、遠慮しながら使ってください」では、まったくもって看板倒れになってしまうからだ。

続きを読む "iPhoneを通して考える通信のこれから:NetShareとNet Neutrality"

| | コメント (6) | トラックバック (1)

2008.07.08

メールの返事がない人は、別の手段で!

fukasawa maniac

これまでブログの更新はは1日1〜2回にしようと思っていたが、
おそらくこのブログの読者は、これからしばらくは、仕事をしていても心ここにあらずで、
ブログも頻繁にチェックしていそうなので(笑)、
ひと言だけ大事な連絡を。

実は7月から、便利さに負けて、主要メールアドレスすべてのメールをGmailに転送し始めた。

iPhoneの発売まで待てば、他のメールアドレスでも外出先で確認できるが、
やはり、Gmailだと、今の日本製携帯でいとも簡単にメールチェックができるのがこの上なくありがたい(リモートメールも便利は便利だけれど...)。

願わくば、メールが届いた時に、電話に受信音がなるなど、
プッシュ通知機能があれば、さらにいいのだけれど、

これはau最新機種のオーナーなら、auone.jpのガジェットを使えばいいのかもしれない。


NTTドコモのユーザーで、特にiモードのネットワーク/メールアドレスは使わないという人は、
日本通信のコネクトメールサービスが、いつの間にかGmailにも対応しているので、それを使うのも手だ!
私も、もしかしたらP905iは、こうやって使うのがいいかもしれない(どうせdocomoのメールアドレスは誰にも教えていないので、現在、1日2〜3通の迷惑メール専用になっているし)。

コネクトメールの詳細はこちらから:
コネクトメールのしくみ

最初は.macだけだった、コネクトメールだが、
今ではAOL、biglobeからTiki Tikiまで9種類のアカウントに対応している。
このケータイサービスの水平分業化の事例は、世界的にみても珍しいのでは?

さて、drikinも(au回線で)やっているけれど、パソコン用のメールすべてに加えて、
携帯宛のメールもすべてGmailに集約すると、便利でたまらなくなる
(ライフスタイル/ワークスタイルにもよるだろうけれど):
Drift Diary12:auoneメール最強伝説 : gmailで携帯もPCも一括管理

ただし、Gmail移行後、しばらくは注意が必要だ。

続きを読む "メールの返事がない人は、別の手段で!"

| | コメント (1) | トラックバック (0)

立体版ドット・アニメーション

最近、YouTubeネタがつづくが、Engadgetで見つけた動画が涼しくていい感じだったので、
執筆エンジンを回転させるために1本(...ブログの記事を書きます)。


[via BMWCCA, via 本家Engadget, Engadget Japanese]


これを見て、真っ先に思い出したのは、「六本木クロッシング:日本美術の新しい展望 2004」で、オーディエンス賞として一票投じさせてもらった笹口数さんの作品。

Googleイメージ検索:笹口数

動いてこそはいないが、(いやだからこそ)あれはあれで素晴らしかった。
いくつか、この角度が好き、というポイントがあって、何度も作品を見に足を運んだのを思い出す。

それにしても、こういうおもしろい動画が日々、追加されていることに改めて驚かされる。

さらに、今やこうした動画はパソコンだけでなく、ケータイでも見られるのだからさらに凄い。

7月11日発売のiPhoneはもちろんだが、
それを待たないでも、他社のスマートフォンや、NTTドコモ製のP904i以降の端末でも見られる。
気がつけば、日本のケータイ電話も一気に動画が花盛りだ。

続きを読む "立体版ドット・アニメーション"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.13

世界というコンテクストでのアイデンティティー

先週、金、土、そして日曜日まで連日で取材が入ったために,仕事が大幅に遅れてしまっている。
特に少しは休養をとりたかった日曜日の取材が、朝から夜7時過ぎまでの長丁場−−すっかりペースを乱した状態で週明けを迎えることになった。いずれの取材も有意義ではあり、この場を借りてぜひ共有したいが、この仕事の遅れでは、それもいつ実現するかわからない。

毎日、1本くらいづつ気分転換のつもりで書いていくかな...

sunset in roppongi [version azur]


ただ、その前に、「知デリ」について書こう。
週末の取材の中では一番おもしろかったのが、大阪大学コミュニケーションデザインセンター(CSCD)の社学連携「知デリ」だった。
なぜ、今、触れたいかというと、実はその第2回目が今週金曜日に大阪心斎橋のApple Storeで開催される(3月16日(金)19:00-20:30)。

ゲストはOpenSkyなどの作品やガンダム展への出品、そして今年10周年を迎えるPost Petの生みの親としてもあまりにも有名な八谷和彦さん。興味のある人は、今からカレンダーにマークをつけておいて欲しい。

本当は、今、この時間を使って一番、書きたいのは、第1回目の「知デリ」の内容だけれど、それをやっちゃうと他の書きたい内容を書くチャンスを永遠に失ってしまいそう。

そこで、まずは2月9日(かなり前だな)に開催された「大型美術館はどこへ向かうのか?:サバイバルへの新たな戦略」について書きたいことを忘れないうちに書いておきたい。

続きを読む "世界というコンテクストでのアイデンティティー"

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2006.11.02

脱家庭用コンセントへの一歩

IMG_9054.JPG
Tokyo Designers Weekを駆け足で回ってきましたが、実は期待していたコンテナ展が少しパワーダウンしていてがっかりした。お台場でやっていた一昨年はかなり楽しかったんだけれど、昨年、絵画館前に移動してから数が減り、ルールが歪められてきた。

貨物コンテナという限られた空間をどう生かすか、という制約の中での工夫が楽しかったと思うのだけれど、気がつくとこんな感じでコンテナを3つつなげちゃっているところがあったり、外に向けて拡張しちゃっているところがあったりと、かなりルールが緩くなってきている。

IMG_9089.JPG
IMG_9091.JPG

とはいえ、要は中身でおもしろいコンテナはやっぱりおもしろい。

いくつかおもしろい展示をまとめて、CNet Japanさんに掲載していただきました。
デジタル家電の近未来デザインとは

個人的に毎年、楽しみなのがコンセプトPCなどの展示で毎年出展し続けている富士通。
今年はPlayful 3A Projectというプロジェクトでつくられたプロトタイプが展示されていました。
どんな展示かは実物を見てのお楽しみ。

一方、もう1つ、これはすごいと思ってしまったのがサンヨー電気の「eneloop」系の展示。
sanyo booth (container)
同社のコンテナでは「Think GAIA」を合い言葉に、同社が掲げる「eneloop universe」の製品群を展示していた。eneloopはご存知、繰り返し使える充電池と気軽に使える乾電池の良さをイイトコ取りした製品で、今年の「グッドデザイン」賞も受賞している。

でも、それだけに止まらず、その先のビジョンもあったんですね。
その先のビジョンというのが「eneloop universe」。
太陽電池で充電できる「SOLAR BATTERY CHARGER」を使って、コンセントに頼らずに電気を蓄えることができるのが、なんとも素晴らしい。

写真はCNetの記事参照

大量生産、大量消費というと、工業製品のことばかりが頭に浮かぶけれど、実はそうしてつくられた工業製品の多くが購入され、開封されると、今度は家庭用コンセントも大量消費している。
今や、そのあたりをよほど意識してセーブしている家でもない限り、「どの部屋のコンセントもたこ足状態」なんてことになっているんじゃないだろうか。

ところで、この「SOLAR BATTERY CHARGER」、実はもう1つ感動した点がある。
実は電力の外部出力端子としてUSBポートを備えているのだ。
として、太陽電池を使った充電器はいいけれど、その先がUSB端子、というのがなんとも素晴らしい。

続きを読む "脱家庭用コンセントへの一歩"

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2005.08.27

来るかMVNOの時代?

Harvard Asia Business Conference in Asia 2005(HABCIA)のクロージング基調講演はKDDIとeAccessの生みの親、千本倖生さんが行った。一番、最後のスライドで語ったのは、MVNOへの期待だった。

続きを読む "来るかMVNOの時代?"

| | コメント (3) | トラックバック (1)

2005.05.09

違法コピー・マーケティング

CNet Japanに、驚く見出しの記事が出ていた

マイクロソフト、米でWinXP Proの違法コピー利用者に正規版を提供[CNet Japan]

よく読むと(当然ながら)、知らず知らずのうちに違法コピーになってしまっているユーザーが対象の実験的キャンペーンのようだ。
 自分のライセンスが偽造され使われているユーザーが、ちゃんとWindows XP Proを購入したことを証明することで、無償でWindows XP Proを受け取れるという内容で、とてもありがたいが、その見出しの大胆な響きに反して真っ当な内容だった。

しかし、実は十数年前、この記事タイトルから想像されるような大胆不敵なマーケティングを行った会社があった。「dynodex」というシステム手帳のリフィル印刷ソフトを出していた米国Portofolio Systemsという会社だ。もはや、手元に資料もないので、記憶だけで書く。

続きを読む "違法コピー・マーケティング"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2004.09.23

Skypeのジレンマ

nobilog2で書くのは初めてだが、最近、あちらこちらでSkypeを宣伝して歩いている。
ご存知、音声チャットに加え、電話もかけられる例のソフトだ。安いし、音質もいいし、何より気軽で楽しいソフトだ。

asahi.comにもDan Gillmor記事が載っていたし、ネット系の友達ならほとんどが知っているだろう。PCユーザーならむしろ旧聞に属する類のニュースだ。

Mac OS Xベーター版はまだまだ新しいが、既に大勢の方がBLOGに記事を書かれているし、今更、書くのもと思って控えていた。

ただ、よく考えると、BLOGやIT系のWebニュース媒体を読み漁って、最新のおもしろいソフトやWebサイトを追っかけているのは、数的には圧倒的なマイノリティーだ。

そして、そうしたニュースの追っかけをしているマイノリティーの方々なら、既にiChatやWindows Messangerなどのチャットソフトを導入している可能性が高く。親しい相手なら既に私のiChatのメンバーリストにも登録されている可能性も高い(数えたら161人も登録されていた。最近、iChatが重くてたまらないわけだ...)。そしてチャットソフトを導入済みとなると、わざわざSkypeを使って電話をかける必要性も少ない。
ここにSkypeのジレンマがある。

続きを読む "Skypeのジレンマ"

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2004.09.21

火山灰

最近、なんかホコリっぽくて、車も真っ白だと思ったら原因はやはりこれですね...

東京新聞:浅間山火山灰、銀座にも

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2004.08.28

大事なのは美意識!?

海外取材前、寝る暇のない状態が続く中、前のエントリーは、怒りと恥と睡眠不足の頭痛の中で、勢いに任せて書き上げた。

後半には読み返してちょっと恥ずかしい内容もあり、仮眠を取った後に削ってしまったが、自分がどこかで感じ続けていた本心であることは間違いない。

続きを読む "大事なのは美意識!?"

| | コメント (6) | トラックバック (1)